地震や津波、豪雨、洪水、土砂災害―。
自然と共に生きる私たちの暮らしは、常に災害と隣り合わせにあります。
今回から始まる「♯イイソナエキャンペーン」は、活字メディアの福島民友新聞社と音声メディアのふくしまFMが
毎月11日を「いい(11)備えの日」とし、共同で展開する防災啓発特集です。
第1回のテーマは「台風・風水害へのソナエ」です。
福島河川国道事務所の丸山和基所長に、日々の生活の中で実践できる「いい備え」の在り方を聞きました。
9〜10月は大型の台風が発生しやすい時期です。記憶に新しい2019(令和元)年の東日本台風(台風19号)や2011(平成23)年9月の台風15号など、この時期の台風は本県に大きな水害をもたらしてきました。
水害は、大雨により河川の水量が急増・氾濫し宅地などに流れ込む「外水氾濫被害」、用水路などが氾濫する「内水氾濫被害」に区別できます。当事務所では過去の水害を踏まえ、阿武隈川の整備と改修を重ねています。流域にお住まいの方は、水害の発生に日ごろから備えておくことが大切です。
災害発生時に最も重要なのは、安全な避難経路の確保と素早い避難行動です。台風では、浸水により避難経路である道路が遮断されてしまうことに気を付けなければなりません。アンダーパスなど低い地形にある道路や、複数の河川の合流箇所近くにある道路などを含めずに避難経路を設定しましょう。浸水時の水量と勢いによっては、建物の上層階に逃げる「垂直避難」も有効です。
これらの備えには、自治体が発行するハザードマップを活用してください。ハザードマップには災害シミュレーションを反映し、家屋倒壊危険箇所や浸水想定区域、浸水深などが設定してあります。これらを参考に避難経路や迂回(うかい)路、避難場所を決めておきましょう。
東日本台風の影響で、郡山市を流れる阿武隈川が行合橋付近で氾濫。
市街地が浸水被害を受けた=2019年10月
(提供:福島河川国道事務所)
【福島民友新聞 2022年9月11日より】
福島民友新聞社とふくしまFMが共同で展開する防災啓発特集「♯イイソナエキャンペーン」。
第2回のテーマは「土砂災害へのソナエ」です。
前回に引き続き、福島河川国道事務所の丸山和基所長に土砂災害から身を守るための意識や行動などについて伺いました。
過去の教訓や最新の情報を基に、「いい備え」を日々の生活に取り入れましょう。
前回は、台風による大雨の影響で発生する水害への備えについて説明しました。今回は、大雨が周辺の環境に及ぼす影響の一つとして「土砂災害」とその備えについてご紹介します。
大雨や地震、火山の噴火などの影響で山や崖が崩れ、流れ込んだ土砂が人命や建造物に被害を及ぼすのが土砂災害です。多くの土砂災害は大雨が原因で、土石流や斜面崩壊を引き起こします。土砂災害は家屋などへの被害だけでなく、道路や河川の閉塞(へいそく)など二次的な被害も大きいのが特徴です。山間部や急傾斜地など、土砂災害リスクの高い地形がお住まいの家屋周辺にないかどうかを調べてから避難経路を設定しましょう。
土砂災害への備えにも、市町村が発行するハザードマップの活用をお勧めします。ハザードマップには洪水、内水、火山防災などさまざまな種類があります。土砂災害ハザードマップは、土砂災害の恐れがある「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」、建物の損壊や住民への危害が生じる恐れがある「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」に区分けされています。例えば福島市では、土砂災害の種別によって、「急傾斜地の崩落」は青色、「土石流」は黄色、「地すべり」は紫色の枠線で表示しています。土砂災害ハザードマップを家の中の見やすい場所に貼っておきましょう。
当事務所は土砂災害への備えとして、吾妻山周辺のライブカメラ、阿武隈川沿川には水位計やライブカメラを設置しており、これらは当事務所ホームページで閲覧することができます。万一への備えに活用してください。
台風による大雨の影響で斜面崩壊が発生した福島市の荒川上流部=2017年10月
(提供:福島河川国道事務所)
【福島民友新聞 2022年10月10日より】
福島民友新聞社とふくしまFMが共同で展開する防災啓発特集「♯イイソナエキャンペーン」。
第3回のテーマは「火災へのソナエ」です。
福島県消防保安課の髙橋伸英課長に、火災から身を守るための意識や行動などについて伺いました。
過去の教訓や最新の情報を基に、「いい備え」を日々の生活に取り入れましょう。
本県では昨年、599件の火災が発生しました。火災種別では「住宅火災」が199件で最多となっており、出火原因もコンロやたばこなどが上位を占めるなど、火災は私たちの日常生活に潜む危険な災害であることが分かります。徐々に寒さが増し、暖房機器を使用する機会が増えるこの季節は火災も増加する時期です。石油ストーブやこたつなど、火の元の確認をいつも以上に入念に行いましょう。
また、いち早く火災発生を知らせてくれるのが「住宅用火災警報器」です。消防法で設置が義務付けられていますが、本県の設置割合は79.2%で全国35位(6月1日時点)にとどまっています。煙や熱を感知して音声で知らせてくれる住宅用火災警報器は、迅速な避難行動を助けてくれる重要な防災設備です。設置や点検に関しては、ぜひお近くの消防本部や消防署にお問い合わせください。
火災における避難行動で何よりも重要なのは「冷静になること」です。まずは煙を吸わないようハンカチなどで口元を覆い、速やかに火の元から離れます。次に、周囲に火災の発生を知らせてから119番通報してください。火災による死者の約1%は、一度避難した後に火の元に戻る「出火後再進入」で亡くなられています。最も大切な命を守ることを最優先に、落ち着いて行動しましょう。
15日まで「秋季全国火災予防運動」を実施中です。6日には、防火意識を啓発する「県火災予防絵画・ポスターコンクール」の表彰式を行いました。皆さんも火災を「自分事」として捉え、命を守る万全の備えにつなげてください。
県火災予防絵画・ポスターコンクール中学生部門で最優秀賞に輝いた遠藤煌芽さん(若松二中)の作品
【福島民友新聞 2022年10月10日より】
福島民友新聞社とふくしまFMが共同で展開する防災啓発特集「♯イイソナエキャンペーン」。
第4回のテーマは「大雪へのソナエ」です。
福島地方気象台の鳴海敏徳気象情報官に、過去の大雪災害の事例や気象情報を活用した
大雪のリスクを避ける暮らしの心構えなどについて伺いました。
間もなく降雪シーズンを迎えます。本県では2010(平成22)年12月25日、会津若松市で1日の降雪の深さ日合計が94cmに達する観測史上2位の大雪が降りました。国道49号が通行止めとなって約300台の車両の立ち往生が発生しました。14年2月14日から16日には、南岸低気圧の影響で中通りに大雪が降り、一般道路・高速道路の通行止め、鉄道の運休・遅延などの交通障害が発生。除雪作業や歩行中の転倒で多数のけが人も出ました。
このように、大雪は建物被害や人的被害だけでなく、交通障害や電線の断線、送電鉄塔の損壊など生活インフラにも大きな影響を及ぼします。大雪への備えとしては「食料の備蓄」「懐中電灯・携帯ラジオなどの準備」に加え、「不要不急の外出を控える」意識が大切です。そのためにも、事前の情報収集を心掛けましょう。
大雪に関する気象情報は、テレビやラジオ、インターネットなどで入手可能です。気象庁ホームページでは、お住まいの市町村の気象情報をまとめて閲覧できるほか、約5km四方に区分けした地域の積雪と降雪量の実況を1時間ごとに推定した「解析積雪深・解析降雪量」や、6時間先までを面的に予測した「降雪短時間予報」も閲覧できます。当気象台ホームページでは、これらの予報の使い方を詳しく案内しています。ぜひご活用ください。
大雪をはじめとした気象災害は、防災気象情報を活用すれば被害を未然に防いだり、軽減したりすることができます。当気象台では、大雪のおそれがある際は大雪注意報(大雪警報)、風雪注意報(暴風雪警報)、着雪注意報、なだれ注意報などを発表して注意・警戒を呼び掛けています。気象情報に十分注意し、外出の予定がある場合は時間に余裕を持って行動してください。
約300台の車両が大雪で立ち往生し、ドライバーは車内で一昼夜を過ごした
=2010年12月、国道49号(西会津町)
【福島民友新聞 2022年12月11日より】
福島民友新聞社とふくしまFMが共同で展開する防災啓発特集「♯イイソナエキャンペーン」。
第5回のテーマは「火山噴火へのソナエ」です。
磐梯山噴火記念館の佐藤公館長に、過去の噴火災害の事例や
被害を避けるための意識・行動などについて伺いました。
わが国には111の活火山があり、本県では磐梯山、吾妻山、安達太良山、沼沢、燧ケ岳があります。このうち磐梯山は1888(明治21)年、吾妻山は1893年、安達太良山は1900年に噴火が発生し、磐梯山と安達太良山で多数の犠牲者が出ました。近年は吾妻山(一切経山)で複数回にわたり噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられたほか、磐梯山では昨年12月28日に24時間で777回の火山性地震を観測するなど、火山活動の高まりが懸念されています。
火山噴火は火口の位置や風向き、地形などによって災害が発生する地域が異なるのが特徴です。県内の各市町村は、火山の噴火形態や発生頻度、規模など想定に応じた複数のハザードマップを作成しています。
また、猪苗代町は2017年、磐梯山の噴火で避難する町民を受け入れる町外広域避難に関する協定を会津若松市、郡山市、磐梯町とそれぞれ結びました。火山周辺にお住まいの方は噴火を「他人事」と捉えることなく、ハザードマップや協定を参考に、状況に応じた避難経路をあらかじめ把握しておくことが重要です。
火山は噴火による甚大な被害の印象が強い半面、温泉や地下水、豊かな土壌、雄大な景観を私たちにもたらす「恵みの山」でもあります。情報を基に火山活動に関する正しい理解を深め、過去の教訓を基に災害への備えをしてください。
吾妻山大穴火口で確認された噴気=2015年3月、福島市
【福島民友新聞 2023年1月11日より】
福島民友新聞社とふくしまFMが共同で展開する防災啓発特集「♯イイソナエキャンペーン」。
第6回のテーマは「地震へのソナエ」です。
自然災害科学を専門とする福島大学人間発達文化学類の中村洋介教授に、今後予想される地震や、突然の地震発生に備え、
日ごろからどのように防災意識を高め、命を守るための行動につなげるかについて伺いました。
2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災は、地震の規模を示すマグニチュード(M※)9の国内観測史上最大の地震でした。巨大地震の場合、その影響を受けた地震が数十年にわたって続く可能性があります。チリ大地震(1960年、M9.5)や、スマトラ島沖地震(2004年、M9.0)の震源域付近では、10年以上たってもM8クラスの地震がいくつも発生しています。
21、22年に続けて発生した福島県沖地震(M7.3、M7.4)も、東日本大震災の影響を受けて発生した地震と考えられます。今後も大きな地震が発生する可能性があるので警戒が必要です。
台風や水害、火山災害などは、発生が予測でき避難などの準備ができます。一方で地震の研究も進んでいますが、いつ、どこで発生するかを正確に予知することはまだできません。自分や大切な人の命を守るため、緊急時に、どう対処するかを日ごろから考え、家具の固定、食料品や水などの備蓄に努めてほしいと思います。
福島県は昨年11月、「福島県地震・津波被害想定調査の概要」をまとめています。自分の住んでいる地域にどんな被害が想定されるのかを確認し、日ごろから危機意識を持って、地震に備えることが、被害の軽減につながると思います。
今年は、死者不明者が10万5千人に上った関東大震災(M7.9)の発生から100年を迎えます。犠牲者が最大32万人を超えると想定される南海トラフ地震も警戒されています。東日本大震災の教訓を生かし、地震に対する日ごろからの防災意識を高める機会にしてほしいと思います。
※ マグニチュード(M)
震度は場所ごとの揺れの大きさだが、地震そのものの大きさ、つまり地震のエネルギーを表すので、大きな地震ほど数字が大きくなる。具体的には、ある地震に比べてMが0.2大きい地震は約2倍、1.0大きい地震は約32倍、2.0大きい地震は1000倍のエネルギーを持つ。
「想定東北地方太平洋沖地震」の震度分布図
(「福島県地震・津波被害想定調査の概要」から引用。
)
【福島民友新聞 2023年2月11日より】